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賃貸経営
2026.07.28

A:気づけばもう半年か。2026年の上半期も、賃貸まわりは話題に事欠かなかったな。 B:ええ。年明けから「住居費」「安全」「保険」と、立て続けに大きなテーマが動きました。 C:順番に振り返っていきましょう。
A:まずは1月だな。23区の新築マンション平均が1億2000万円超──この数字に驚かなくなった自分が、むしろ怖いよ。もはや1億円が標準という感じになった。
C:中古分譲も新築につられて高止まりで、ファミリー向けを中心に賃貸住宅の家賃も歴史的な値上がりが続いています。統計では前年比1割ですが、人気物件では2割近い上げ幅も珍しくないとか。
B:23区では世帯所得に占める家賃負担が、ついに4割に達したという調査もあります。
A:本来は分譲マンションを買うはずだった層が「買うより借りる」に流れている。持ち家断念層が入ってくるから、都市部のファミリー賃貸はタイトになる一方だ。
C:中東情勢の緊迫化や資材・人件費の上昇を背景に、建築費の高止まりは続きそうです。さらに新規供給が細りそうですから、家賃の天井も上がります。需要増・供給減・相場上昇の三つが同時に効いていますね。
B:その流れは、2月の物件検索サイトを運営するLIFULL HOME’Sの住みたい街ランキングにもはっきり出ていました。「買って住みたい街」の首都圏1位が、なんと湯河原です。
A:湯河原といえば、東京から100km、特急で90分の温泉地だぞ。マンションを求める実需層がここまで外側に押し出されたのか、と驚いたよ。
C:一方で「借りて住みたい街」は1位葛西、2位八王子、3位大宮といった郊外ターミナルに人気が集まりました。家賃高騰の影響もあって、都心へ直通できて賃料は一段安い、いわゆる「ずらし駅」が上位に入ったそうです。借り手は利便性を捨てないまま、少しでも家賃が安い所に集中しているわけです。
B:ずらし駅はもう「安いから選ぶ」市場ではなく、設備や住環境の質で比較される市場になりつつあります。水回りやネット回線に投資すれば、同じエリアで一段上の家賃も狙えると言われています。
A:3月の公示地価も印象的だった。全国2.8%上昇で、5年連続のプラスだ。
C:ただ「上がった」だけでは語れません。北海道の千歳は駅周辺の特定地点が44.1%上昇で、2年連続の全国1位。ラピダスの試作ライン稼働で、地価の根拠が期待から実需へ移ったと地元メディアも報じていましたね。
B:長野県白馬村では、住宅地平均が22.8%上昇。個別地点では住宅地の上昇率で全国トップとなる地点も出ました。観光客数はコロナ前を超えて過去最高です。
A:施設ができれば街が変わる。半導体も観光も、強い個別要因を持つ地域が地価を引っ張る構図が、くっきりしてきたな。広島県の東広島市では米国半導体メーカーの投資(約1兆5000億円規模)が発表されました。1万人近い人口増が期待されていて、ハウスメーカー、アパートメーカーの鼻息が荒いみたいだ。
C:A(I 人工知能)の発展でAI向けの半導体需要が世界的に急拡大しています。韓国の半導体メーカーSKハイニックスやサムスンは四半期(3カ月)だけで数兆円の利益をたたき出しているそうで、ボーナスだけで年収並みの額が支給されるそうです。
A:ソウル市内のマンションは日本以上に高騰していると言われているけど、それだけ稼いでいたら買える人は沢山いそうだな。スゴい話だよ。
B:不穏なニュースもありました。大手不動産ポータルサイトへの問い合わせデータ、約240万件がダークウェブで売買された可能性が報じられました。
C:氏名や連絡先だけでなく、年収、家族構成、転居理由、現在の家賃まで…引っ越しを考えた人の生活情報が、丸ごとですね。
B:複数社が同時に攻撃されたというより、各社が共通利用する管理システムが流出元では、との見方も出ています。 結局、売りに出されていただけで悪用された事実は確認されておらず、大規模な二次被害は現時点で明らかになっていないものの、業界全体で情報管理のリスクが改めて問われましたね。
A:最近は不動産会社はいろいろなITサービスを連動して使うから、一カ所が破られれば連鎖してしまうと専門家が指摘していた。便利になっている一方で「一点突破・一網打尽」のリスクがある、というわけだな。 オーナーも人ごとじゃない。自分の物件情報や入居者情報が、どこに預けられているかは把握しておくべきだな。
C:データの流出も怖いですが、こちらは物理的な恐怖を感じるモバイルバッテリー火災の急増も話題になりましたね。消防庁によると、モバイルバッテリーによる火災は2024年の290件から2025年は482件、約7割増の勢いだとか。
B:企業の調査では、モバイルバッテリー火災で自室が損傷した場合に「自分に賠償責任がある」と正しく認識していた入居者は45.1%どまりです。バッテリーに異常を感じても使い続けている人も4割近くいた、という調査にはドキッとさせられますよ。
C:航空機内の発火事例もあり、各社がモバイルバッテリーの取り扱いを厳格化するようになっています。
A:海外の空港では没収される人も増えているよ。不動産業界ももっと神経質になってもおかしくない。何かあったとき賠償責任が入居者にあっても、まず傷つくのは物件そのもの。借家人賠償責任保険にきちんと入っているか、管理会社と確認しないといけないかもね。契約時にはもちろん、入居者には定期的にモバイルバッテリーの扱いについては知らせたほうがいい。
A:5月は保険の話が重かった。築古や水害リスクの高い分譲マンションで、「希望の補償では引き受けられない」「複数社に断られた」というケースが出始めた。
C:災害の激甚化で、損保の火災保険分野は長年赤字とも言われます。値上げだけでなく、引受条件の厳格化まで進んできました。 これは分譲だけの話で終わりそうにありません。築古・木造を中心に、賃貸でも「保険に入りたくても入れない」未来があり得るようになっています。
A:それでも無保険だけはまずいよ。でも、あと数年もすれば、免責金額の見直しや不要な特約の整理で、オーナー側にも最適化が求められるのかもしれない。賃貸経営も年々複雑になっていくな。
C:一方で、前向きな話もあります。総務省の調査では、民間賃貸が「災害時の住まい」として復興計画に組み込まれる方向です。能登半島地震でも、被災者が一般の賃貸に入った後、行政契約に切り替える例が多く見られました。「埋まらない空室」は賃貸経営の重しですが、「地域の備えとしての空室」となるなら、社会の見方も変わるのかもしれません。
A:さて、下半期はどうなるかな。注目はやはり金利だな。上昇局面が続けば、マンションを買えない層がさらに賃貸へ回る。上半期の「買うより借りる」が、もう一段加速しかねないと思っているよ。
C:賃貸オーナーには追い風ですが、実質賃金はマイナスが長く続きました。入居者の家賃負担はいよいよ限界が近いという人もいます。賃料を上げる余力と、入居者の体力とのせめぎ合いになりそうです。
B:もうひとつ気になるのが、京都の学生マンション管理会社に米系ファンドがTOBを発表した件です。安定した賃料が見込める日本の賃貸管理は、海外マネーには魅力的に映っているようです。
C:学生向けやワンルームの管理会社は、まとまった戸数を一気に押さえられますからね。下半期は、同様の買収や資本提携の動きにも注目です。
A:海外マネーの流入は、外国人オーナー問題とも地続きの、根の深いテーマだ。下半期も目が離せないな。
C:こうして並べると、上半期は「住居費」「安全」「保険」が同時に揺れた半年でした。
B:どれも、これまでの前提が通用しなくなっているのが共通点です。安く借りられる郊外、当たり前に入れる保険、安全に預けられる個人情報──その「当たり前」が、一つずつ問い直されました。
A:賃貸住宅が、単なる投資物件ではなく社会インフラとして問われ始めているようにも思う。住居費、安全、保険や災害対応まで含めた存在だ。下半期も、その視点を持って取材を続けたいな。
例えば、家賃7万円の部屋が2か月空室になれば、それだけで14万円の家賃収入が失われます。さらに原状回復費や募集費用が加わると、物件や地域、募集条件によっては、退去1件による実質的な負担が30万円、40万円を超えることもあります。退去は単なる入居者の入れ替わりではなく、賃貸経営の手残りに大きく影響する出来事なのです。
・原状回復費
・募集広告費
・清掃・修繕費
・家賃見直しリスク
退去理由は、大きく2つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 防ぎにくい退去 | 防げた可能性のある退去 |
| 🛫転勤 | 🔩設備不満 |
| 👰結婚 | 🧹共用部の汚れ |
| 🏠住宅購入 | 📢騒音・近隣トラブル |
| 👔進学・卒業 | 🚙修繕対応の遅れ |
| 👪家族構成の変化 | 😓家賃と満足度のズレ |
防ぎにくい退去は、オーナー側で完全に止めることは難しいものです。一方で、防げた可能性のある退去には、次の経営改善につながるヒントが隠れています。
例えば、同じ物件で短期退去が続いている場合、単に入居者との相性だけが原因とは限りません。エアコンの効きが悪い、インターネット環境が弱い、ゴミ置き場が荒れている、共用灯が暗い、駐輪場が使いにくい。こうした一つひとつは小さな不満に見えても、入居者にとっては日常のストレスになります。
そして、更新時期や生活環境の変化をきっかけに、「この機会に引っ越そう」という判断につながることがあります。
つまり退去は、ある日突然起きるのではなく、小さな不満が積み重なった結果として表面化する場合もあるのです。
大切なのは、退去理由を「仕方ない」で終わらせないことです。退去時に聞き取った理由を、経営データとして見ることで、次に打つべき一手が変わります。
✅短期退去が続いていないか?
✅同じ不満が複数の部屋で出ていないか?
✅設備の古さが家賃に見合わなくなっていないか?
✅共用部の印象が内見時や入居継続に影響していないか?
✅更新時に住み続けたい理由をつくれているか?
例えば、「収納が少ない」という声が複数あるなら、次の募集時に収納家具の提案や写真の見せ方を工夫できるかもしれません。「室内は悪くないが共用部の印象が良くない」という声があれば、大きなリフォームよりも先に、清掃、照明、掲示物、ゴミ置き場の改善を検討する方が効果的な場合もあります。
また、設備への不満が多い場合も、すべてを一度に交換する必要はありません。家賃帯や入居者層、競合物件の設備状況を見ながら、優先順位をつけて改善することが重要です。退去理由を見れば、感覚ではなく、実際の入居者の声に基づいて投資判断がしやすくなります。
賃貸経営では、満室にする力だけでなく、満室を維持する力が収益を左右します。新しい入居者を決めることはもちろん重要ですが、長く住んでもらえる物件にしていくことも、収益を守る大切な空室対策です。
更新時や退去時に、入居者がどのような理由で住み替えを考えたのか、担当の管理会社と一緒に、一度こうしたポイントを確認してみてはいかがでしょうか。
退去理由をただの結果で終わらせず、次の経営改善に活かすことが、安定したアパート経営への第一歩になるかもしれません。
